044336 ランダム
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うるはる

 秋は終わり、冬が来た。春が来るまで、雪に閉ざされた、この寂れた街で、冬を越し春を迎えられないだろう。…でも、来年の春には、あの人が戻ってくるって言ってたから。私は、氷が邪魔で見えない掲示板を両手でこすって、文字が読めるまで手がかじかんできて、冷たくて痛いのを感じなくなって、いけない、凍傷になったら…と思ったりで、そこに出てきたのは、長いこと何も張り出されっぱなしで、もう何年も前の広告だったり、落書きだったり…人がぶつかって、人がここに自分の体の手とか頭とかをぶつけて、色が付いて、嫌、こんなの、なんか、いやだ。

 もう、何年も灯かりを点けずに、まっくらな夜が続いてる。昔は当たり前の夜の暗闇に人のなにもかも、いいところも…悪いところも、いっしょくたに混ざり、濁った色じゃなくて、透明で澄んだ色になる。どれだけ多くの色が混ざったら、こんな色を出せるんだろうか?けれども、今日が終わり、また明日が来る。


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